【ドラマ原作本】黒川博行「後妻業」を読んだ感想。金への欲望が渦巻く犯罪小説

黒川博行さんの小説「後妻業」を読みました。

資産目当てに高齢の資産家男性と次々に結婚していく「後妻業」を生業にする女性を描いた作品。

後妻業の女たちと、追う探偵、後妻業の女に遺産を取られた家族を中心にストーリーは進み、徐々に明らかになっていく後妻業の手口。

物語の後半、後妻業の全貌が明らかになっていく部分は特に面白く一気読みしてしまいました。

テーマがテーマだけに全体の雰囲気はダークではあるので、読む人は選ぶ作品ですね。特にストーリーの初めは後妻業の仕事が現在進行形で進んでいくのでかなり暗いスタートです。

この作品のテーマの「後妻業」は小説としての話ではなく、実際に似たような事件がニュースでありましたし(保険金目的のものも近いでしょうし)、犯罪のない単なる資産目的での結婚ならもっと現実的にありそうです。単なるミステリーの中だけでなく、リアルの事件を感じさせるところもまたこの作品のインパクトを強めている印象です。

アングラ系、犯罪モノの作品が好きな人には、間違いなく楽しめる作品です。

原作者の黒川博行さんについて

2014年に「破門」で第151回直木賞を受賞した直木賞作家です。同じく「破門」で2015年の「このミステリーがすごい!」で8位を受賞しています。

大阪を舞台にした警察小説やミステリー作品を多く書かれています。

後妻業のあらすじ

妻に先立たれた後期高齢者の耕造は、六十九歳の小夜子を後妻に迎えていた。ある日、耕造は脳梗塞で倒れ、一命を取り留めるも喋れない状態に陥る。耕造の遺産を狙う小夜子は、結婚相談所を経営する柏木と結託し、早急に耕造の金庫から銀行の総合口座通帳と銀行印を奪い取り、三千九百万円をあっさり手にした二人。数日後、耕造の容体が急変する。耕造の娘である尚子、朋美は病院へ駆けつけるが、そこにはすでに小夜子の姿が――。
 
今作は、前科持ちの結婚相談所の所長柏木と、海千山千の女性小夜子がコンビを組んで、妻に先立たれた老年の資産家男性たちをターゲットに、彼らの遺産を狙う、その名も「後妻業」。そのやり口は、籍を入れることなく、自らの家財を運び込み、実質的な妻として振るまうことで、妻としての地位を確立し、ひそかに、遺言書を作成してしまうというやり口だった。そして、頃合いを見て、男性を殺害し、遺産は山分けをする。順調に行っていたかに見えた「後妻業」の影に横たわる資産家たちの不審死の闇。遺族も気づかなかったその巧妙なやり口に、遺族とその同級生の弁護士も気づくのだが……。内情は真っ黒な行政書士、元刑事の興信所所員、ムショ帰りの小夜子の兄、そして柏木の知られざる過去などが絡み、ストーリーは思わぬ方向へと転がっていく。

後妻業を読んだ感想

「後妻業のエース」と呼ばれる女がどうターゲットに近づき、どう資産を自分のモノにするのか、その流れがリアルに描かれていて想像するとゾッとさせられます。

ストーリー初めは「後妻業チーム」が資産家男性と結婚し、資産を手に入れるまでのやりとりが進んでいく様子が淡々と描かれるので、かなり重苦しい雰囲気です。

後半は探偵を中心に「後妻業チーム」の過去が暴かれていくミステリー作品としてテンポ良くストーリーが進み、一気に読み切れる作品でした。

舞台は関西で大阪や神戸周辺の地名が多く出てきて、セリフも関西弁なので、関西にゆかりにある人にはよりリアルにストーリーを感じられるはず。

ドラマ、映画、マンガ化もされている

テレビドラマ版は2019年に放送されていますが、それ以前に映画化、マンガ化もされています。

原作に比べてコメディ色が強いのも特徴です。

原作小説では「後妻業のエース」小夜子は69歳ですが、テレビドラマ版では45歳という設定で木村佳乃さんが演じています。

ターゲットとなる資産家の結婚相手(原作では91歳)の男性と並ぶと、完全に親子。

原作以上に2人の年齢差が目立つ夫婦です。小夜子の美貌と派手さが原作以上に感じさせられる印象ですね。木村佳乃さんと小夜子のイメージが全く合わなかったのですが、しっかり悪女感出ています。

ドラマ版ではターゲットの資産家男性の娘も45歳で同い年という設定です。

後妻業で小夜子と組む、結婚相談所所長の柏木は高橋克典さんが演じます。こちらもいかにも怪しい裏の顔をもつ実業家的な雰囲気を出していてハマり役。

原作は淡々とリアルで暗い雰囲気を感じさせるストーリーでしたが、ドラマ版はかなりコメディに描かれています。関西のノリ、明るさが全面に出てる雰囲気です。

ドラマは原作とだいぶイメージ違いますがエンタメ作品として面白く、原作よりもストーリーに入り込みやすい印象ですね。

原作と設定が変わってる分、結末へのストーリーアレンジにも期待したいところ。

ちなみに映画化もされていて「後妻業の女」として、大竹しのぶさん主演でつくられています。小夜子のイメージは映画版の方より原作に近いです。

映画の「後妻業の女」はAmazonのプライムビデオで見ることもできますよ。

実はマンガ化もされていて、ほのぼのした作風の「村上たかしさん」が作画をされています。映画にもなった「星守る犬」の作者ですね。マンガ版はまだ読んでませんが、ほのぼのとしたタッチの絵柄で「後妻業がどう描かれているのか気になるところです。

まとめ

後妻業」は初めて読んだ黒川博行作品でしたが面白かったです。

犯罪小説特有の重苦しさはありますが、ハードな描写は少なくストーリーもテンポ良く進んで読みやすい作品ですよ。

小説はリアルに描かれているので、苦手だけど興味ある方はドラマや映画から入ってみると良さそうです。

他の黒川博行さんの作品も読んでみたいと思わせられる一冊でした。